バレンタイン・デー
(信濃毎日新聞2002年2月14日朝刊掲載)
立春を過ぎると、ターミナル駅の地下道には色鮮やかなチョコレートの出店が並ぶ。最初は人だかりもまばらであるが、バレンタイン・デー前日ともなると、大量にチョコレートを買い込む若い女性たちでごった返す。
バレンタイン・デーの由来については、毎年この季節になると新聞や雑誌のコラムに散見されるが、その名前の由来は、三世紀頃ローマに実在したキリスト教司祭・聖バレンタインへ遡る。
当時皇帝クラウディウス2世は、兵士たちが家族を想い士気が落ちないよう結婚を禁止していたが、聖バレンタインは結婚をのぞむ兵士たちにひそかに力を貸し、結婚式をとり行った。このことが皇帝の知るところとなり逆鱗にふれ、さらに高まるキリスト教迫害とあいまって処刑されたという。この処刑の日が二月十四日であったことから、聖人の愛深い姿を記念して、のちにこの日に恋人同士が贈り物を交換する習慣になったと伝えられる。
バレンタイン・デーには、個々の思いがそれぞれあろう。
「ぼくはバレンタインとクリスマスが嫌いです」とはっきり言い切った青年がいた。
「義理チョコ」の織りなす「バレンタイン模様」もさまざまだ。勤めていた出版社で、女性編集部員が贈ったチョコレートを「つまらないものですが」と言って、衆目の中来社した著者の先生にあげてしまい(先生は再三辞退されたのだが)、皆の総スカンをくった編集長がいた。また、知り合いの保険会社の支社長は、たった一人の女性の部下がチョコレートをくれないことについて、「義理もないのか」と言って憤慨していた。
日本では女性が男性にチョコレートをプレゼントするのか一般的であるが、西洋では男女双方が想いをよせる人にカードを添えて贈り物をするという。義理チョコなどは、もちろんない。
ちなみにお隣の韓国では、四月十四日を「ブラックデー」として、バレンタインの告白に失敗した人たちが、黒い服を着てジャージャー麺を食べるのだそうだ。
黒きハートヴァレンタインのチョレート 山口青邨
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