兆 し
(信濃毎日新聞2002年2月28日朝刊掲載)
草木が芽吹くいのち溢れる季節――その新しい季節にふさわしい詩歌の雑誌が創刊された。その名は「草蔵」。
「ねがわくは句と歌と詩の言葉が草ほどの光栄を纏うてわれらが書の蔵に入らんことを」――との開扉の辞からも読み取れるように、「草蔵」は、まさに詩・短歌・俳句の壁を越えた詩歌の総合誌である。
詩歌を総合的に捉えた雑誌としては、「花神」(花神社)、「鳩よ!」(マガジンハウス)などが思い出されるが、いずれも現在は休刊。詩歌の総合誌がいかに商業ベースとして難しいかを物語っている。
さて、今回創刊された「草蔵」は、いわゆる商業誌とは異なるが、代表者・編集人みずからが詩を作り、短歌を作り、俳句を作り、熱い詩論を展開している。ここに今までの雑誌とは異なるこの雑誌の特徴と魅力がある。
代表者の佐々木六戈(ろっか)氏は昭和30年生まれ。平成11年に角川短歌賞を受賞。氏は同年の角川俳句賞の最終選考にも残った異色の人。
当時の授賞式で、氏はこう語る。
「私は俳句も短歌もなまなかな気持ちでやっていません。俳句と短歌に自分自身を挟みうちさせるように、志をもって作っているつもりです」
いっぽう編集人・境野大波氏は現役の編集者。新誌では詩の選者を務めるが、その該博な知識と交遊が、雑誌の多彩さと豊かさになって表れている。
氏は編集後記でこう語る。
「(二十一世紀になって)確かに何か新しい胎動のはじまっている気配がする。後退に後退を強いられてきた詩歌・俳句の世界に於いてさえも」。
春になって厚い氷が解けてゆくように、ジャンルを隔てていた厚い壁も、少しずつ解けはじめているのかもしれない。
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